『デルフトの眺望』(ヨハネス・フェルメール) 1660年-1661年頃 マウリッツハイス美術館

ホーム 
 真珠の耳飾りの少女
文字サイズの変更: | | | 


女神の肖像

バロック期の画家ヨハネス・フェルメール(1632-1675)の代表作『真珠の耳飾りの少女』を題材にした映画が2003年に製作されているが、映画も同名のタイトルで主演をスカーレット・ヨハンソンが務めている。レンタルDVDでその映画を観たのだが、これがなかなかよく出来ている。中世のオランダ、デルフトの街を舞台にしたフェルメールと、絵描きの家に下働きとして働くようになった使用人グリート(スカーレット)との誤解を招くような、あらぬ関係のストーリーだ。これはあくまで子だくさんのフェルメール存命中の推測をした小説の映画化であって、確たる文献史料に基づいた物語とはいえない。が、芸術を理解しない者と理解できる者との人間対比は、実に的を射ってうまく表現されており、とても感心した。フェルメール夫人の無理解といい、タイル絵師の父を持ったグリートは絵画の色彩や光のコントラストといった感性に敏感で芸術に対して深く理解できたが、美貌の持ち主でもあったそんな使用人グリートへのフェルメール夫人のたまりかねた嫉妬心はついに爆発、映画は画家の葛藤とグリートの切ない心情と煩悶を残して、あっけなく終わってしまう。面白いのは、フェルメールの代表作品がどのようにして生まれていったか、それをいろいろ推測して原作脚色・脚本したところだろうか。

油彩絵画の顔料には金に糸目をつけなかったフェルメールが、青色に少し安価だったアズライト(宝石)ではなくウルトラマリンといった最も高価な天然石ラピスラズリ(古代からの宝石)を原料にして使用していたようだが、アトリエでグリートにその絵具を作らせる場面があって、徐々にさまざまな作品も仕上がってゆくにつれ、いつしかグリートにフェルメール夫人所有の真珠の耳飾りを付けさせた少女像の作品が見つかってしまうシーンは、夫人を狂乱させてしまう場面ともなる。アトリエには家族の者は一切立ち入らせない慣習を設けていたフェルメールだったが、あまりに美しいグリート像には、女優スカーレット自身もこの時ばかりは映画撮影であることを忘れていたかもしれない。

 

TOP
(2018/01/09)





制作・著作 フルカワエレクトロン