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  春のキャンパス     2016
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シスレーの絵

印象派画家アルフレッド・シスレー。19世紀後半のフランス風景画家。イギリス人の両親を持つパリ生まれ。1870年に勃発した普仏戦争により不遇の生涯に見舞われたが、その画風は空と水辺の穏やかな風景を描き続けた風景画家として知られている。若い時に影響を受けたモネやルノワールといった仲間たちとの交流は晩年まで続き、終生変わらぬ印象派画家としての作品を多く残している。

シスレーのような風景画家の絵にこの頃とても惹かれている。
Bridge at Villeneuve-la-Garenne(1872)

春のキャンパス2016~絵画のこと、写真のこと」で私なりに少しだけアルフレッド・シスレーのことについては触れてみた。こちらでは1872年作の「ヴィルヌーヴ・ラ・ガレンヌの橋」を紹介した。とてもすばらしい絵画だ。私は20代に6年半ほど京都に住み、京都国立近代美術館や京都市美術館にはよく足を運んだ。わずか千円の入館料で、世界一流の美術展や至宝が観られるので、次々に来る展覧会がとても楽しみだったのである。中でもフランス印象派画家たちの代表作品を自分の眼で間近に観られるのは、この上もない感動があった。目の前で当時の画伯たちの息遣いを感じ、さらさらと描いてゆく絵筆の感触をまるで眺めているようでさえあった。印刷物ではなく本物の作品を目の当たりにすることは、とても貴重な体験のように思えたものだ。

本物を知るとは、こういう体験の積み重ねが作家を志す者にはとても重要だと考えていた。本物の作品から影響を享けることが、そのまま何も無い自分を少しずつ形成してゆくのではないか、学べば学ぶほど自分には何も備わっていないことを知っていたからでもある。きっとシスレーにしてもモネにしても最初は何のモチーフも無かったのではなかろうか。ありとあらゆる芸術の世界が、とてもまばゆく輝いてみえた20代のあの頃の自分だった。眩惑にゆらめいた青春期は、いつしかとんでもない年齢を迎えていたのには自分でもがっかりするけれども、世の中の燦爛とかがやく美術品だけは永遠に輝きを失わないことにも驚嘆してしまうのも事実であろう。

「Flood at Port-Marly」  Alfred Sisley
1876年 ; Oil on canvas, 50 x 61 cm; Musee des Beaux-Arts, Rouen / Musee d'Orsay, Paris

(2016/03/23)

断層

どんなに足掻いても抜け出せない断層。過去に自分がどれほどのものを積み上げて来たとしても、決して成功することのない能力の限界。ただひたすらに時間の層によって、埋もれてゆくのみ。価値観の相違だけでは決して解決はしない社会の仕組みと法則の帰結。まるで人知れず断層に仮面がのめり込んでゆくような、手も足も出ない足枷の重荷。名も無き仮面の跡形だけを残して埋もれてゆく。才能はカネでは買えない代物だと人は信じているかもしれないが、カネでどうにでもなる世界もある。だが、カネでは買えない世界ほど、カネに支配されない世界ほど、どんなにか自由でどんなにか楽しいことか、私はそれを知っている。


不老不死   映画『アデライン ~ 100年目の恋』(2015)を鑑賞して

不老不死へのあこがれ。分子生物学的に、二重螺旋構造のゲノムDNA細胞は染色体の4つの両端に被さるテロメアによって同じ特徴を繰り返す配列構造だが、その長さは齢を重ねるごとにだんだん短くなってゆく。それぞれ人によって同じ年齢でありながらテロメアの再生寿命は異なる。遺伝性のDNA細胞分裂は人の生涯を大きく左右するかもしれないが、何らかの病気や事故あるいは不測の事態によって生涯の長さが変わってしまう確率のほうが、テロメアよりも影響は大きいかもしれない。

しかしながら、規則正しい生活リズムと適度な運動やウォーキングなどの有酸素運動を保持しようとする健康な体を支えているものは、人それぞれの意志や意識をつかさどる脳細胞の影響も計り知れないだろう。脳細胞の活性化や睡眠時間との健全な均衡の維持も、やはり生まれつきのテロメアの活性再生能力による支配率によって、ある程度の運命を左右するかもしれない。不老を防ぐことになる、テロメラーゼという酵素が機能するテロメア伸長のDNA反復配列の複製も、さまざまなタンパク質の結合なので、ふだんの食事と栄養摂取が長い年月の過ごし方でいかに影響して来るか、考えると実に怖くもある。

(2016/03/17)
文・古川卓也





制作・著作 フルカワエレクトロン

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