二足の草鞋 (1973年)
オレはいつか小説家になる、と志して、はや半世紀になる。いまだになれない自分を、恥じてもいないし、毎日楽しく笑って過ごしている。すぐれた文豪の多い文学の世界はそれほど楽しいし、すばらしいのだ。いつでも弱い心の味方をしてくれた文学の世界に、まるで引っ張ったゴムのように自然と戻ってしまう自分がいつもそこにはいた。自分もいつか、あのような感動を与えられる作品を書いてみたいと思い、これまでたくさん書いて来た。が、あまり評価はされて来なかった。それでも書かずにはいられない性分なので、仕事の合間に今もコツコツと書いている。振り返れば二足の草鞋の半生だった。本業は部品販売なのに、今も作家稼業を目指しているのは奥床しいことでもある。自分にとってはどちらも本業なのだ。やりがいのある本業を持つのは実に面白い。
逃げたい気持ち (1985年)
某実店舗の電子部品販売初日、店内に立たされて来客があると、「すみません。〇〇ありますか?」とよくお客様に聞かれ、「いらっしゃいませ。〇〇って、何でしょうか。パーツのこと、何も知らなくて、きょうからここで働いてるんです。社長から部品の場所を先に覚えなさいって言われたんですけど、物が多すぎて、チンプンカンプンで、ホントに申訳ありません」と逃げ腰だった36年前の当時の自分を思い出します。
(2022/05/16)
文・ 古川卓也
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