プレシャス   感動の一枚  2019

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雪のパリ、ルビー色スノーコート

雪の舞うパリ市街地は、その日、ファッション・モデルたちのために、あたり一面を真っ白にして美しい雪化粧を施した。カメラが捉えるシャネルのトータルルックに身を包むモデルは、雪景色さえファッションにしてしまった。主役は行き場に迷った路頭に佇むモデルたちなのに、雪で阻まれてしまった彼女たちの姿を瞬時に最高峰の質感と画角に仕上げたプロカメラマンの腕がまた素晴らしく一級だ。降る雪をここまで演出させてしまう一眼レフのレンズがまたいいようで、絞りを開放F1.4にしたEF50ミリ単焦点か、開放F2.8にしたEF24~70ミリのズームレンズあたりの明るいレンズでなければ、雪ボケや緑赤玉のボケが背景のグレーに活きまい。まして、深いルビー色のスノーコートの映えること。コートのボタンひとつ一つがシャネルのマーク入りで、オートクチュールの着こなしは実に見事だ。撮影も手馴れているようで、繊細で絶妙な配色は圧巻だ。車道と降雪を背景にしたモデルとの被写界深度の緻密なこと。そして、コートにお似合いの、チョコレート色のシャネルの豪華なポーチとの組み合わせのセンスのいいこと。ファッションブランドのシャネルがデザイン・コーディネートしているのだろうが、まさか雪景色までシャネルブランドにしてしまおうとは恐れ入った。

(Beaute : 2019/01/22 FIGARO・フランス)
Stree Style : 2019/01/23 FIGARO・フランス

(2019/02/12)

【追記】 後日PhotoshopのBridgeで上の画像の撮影ファイル情報をみると、使用のカメラボディはキャノンEOS- 1D X MarkⅡで、レンズはEF85mm F1.4L IS USMの単焦点レンズを使用、絞り値も当然F1.4となり、ISO感度400にてシャッタースピードは1/2500秒、77mmの大口径にして焦点距離85mmとあっては、絶妙のタイミングで近距離ポートレートを完成させるために寒いなか、いかにモデルと楽しく会話しながら撮影していたかがそれとなく窺える。こんな高いカメラとレンズを持ち合わせていない大衆の一人としての私の想像力の器の浅さというか、未体験から生じる未知なる撮影機材の力量にただただひれ伏せてしまう。舞台は冬のパリ、遠い世界ではあるが、ランウェイを歩くモデルたちの光景が目に浮かぶが、あこがれの世界ではある。いずれにせよ、F1.4の85mmで一回パリを撮影してみたいものだ。それにしても2019年中に発売予定のEOS 1D X Mark IIIとは、一体どんな価格なんだろう。遠い憧憬の世界を横見しながら、私はいまだに分相応の古い72mmの口径レンズで我慢しているが、いかなる被写体も一流に魅せたいとは常々思ってもいるのだが。

「両手をこんな風に水平に広げていただくと、あなたのコートの裾が少し開いて、お美しい内側の天使の羽もちょっとだけ見えるんですがねえ」とカメラマンは促すように、モデルに笑みを浮かべながらささやいたのだろうか。

(2019/02/15)

文・ 古川卓也
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制作・著作 フルカワエレクトロン