風景が見える音の世界ホーム
DTS-HD Master Audio 異次元のサウンド世界

ブルーレイで体感するスタジオ・マスターの驚愕サウンド
高精細なブルーレイ映像に本物の原音が甦る!
文字サイズの変更: | | |
原音回帰とアトラクションが融合する映画の世界

映画そのものが進化しているのか、求められる究極の映画の形なのか、美しすぎる繊細な映像美と高度なサウンド技術がだんだんと深まり合い融合するようになって来た。これまではVFXやCGで彩られる映像の躍動が先行して目立っていたが、ここ数年のあいだに映像と共に含まれていた音質の豹変ぶりは圧倒的に進歩して来ているといえる。知らぬ間に自分が映画のなかでアトラクション状態に陥っているのがよくわかるし、オーディオ・ルームがいつの間にかホームシアターに化けている按配なのだ。

そもそもブルーレイレコーダーがオーディオ機器に加わった時点から、部屋はひそかに一変してしまったのだろう。オーディオ機器にブルーレイレコーダーが接続され、液晶テレビは当然ながらブルーレイレコーダーとつながる。最初はAVアンプを1台買ってホームシアターの構成も考えたのだが、AVアンプは確かに接続端子がいっぱいあってホームシアター作りには便利とも思ったが、AVアンプのトランスの小ささには従いてゆけなかったのだ。オーディオ用スピーカーのマーティン・ローガン「SEQUELⅡ」を最大限に活かすには、やはりオーディオ用のアンプが必須なのだ。機器間の効率よりも適応重視と判断した。海外製のハイエンド・スピーカーには海外製のハイエンド・アンプで揃えようかと当初は悩んだが、国産品で信頼の篤い最高級のインテグレーテッド・アンプを選んだ。サンスイのAU-α907DRである。サンスイとマーティン・ローガンとの相性はいいようで、1990年当時から2014年現在まで堅調なエージングが続いていて、今も現役でバリバリだ。いいものは長く持続するようである。

そんなオーディオ用アンプであるが、これが実は功を奏しているのか、ブルーレイでのみ再現される「DTS-HD Master Audio」で録音された、スタジオ・マスターと同列の原音領域を鮮やかに再現してくれるのである。アンプの音量ボリュームはほんの少し1/5程度ほど回すだけで、劇場空間となってしまう。DTS-HD Master Audio のDTSメーカーの技術資料は下記の通り。

DTS Audio Codec Overview

このDTS-HD Master Audioの体感を100%得ようとするなら、先ず絶対的にスピーカーの力量ということになるだろう。いかなる周波数の音域も逃さない再生能力が必要であるし、いかなる種類の音域も耳で聴くのではなく、体(からだ)全体で味わうことのできるホームシアター環境が必要だ。部屋の外部に影響が出ない防音効果の部屋づくりであったり、吸音材代わりとなるような工夫が大事だろう。まさにアトラクション状態の世界を迎えられる部屋でなければならない。そこは紛れもなく異次元の映像世界を体感する場所ともなる。映像から放たれた部屋全体に拡がる圧倒的なサウンドは、一つ一つの音が独立して醸し出される絶妙なトライアングルの3D音源に包み込まれてしまう。どの音ひとつ取っても丁寧すぎるほどの新鮮なサウンドがちりばめられているからだ。まるで解析できるくらいの多種多岐にわたる音質再生となっている。アクション映画などの爆破シーンはまるで風圧を感じ、緊密な部屋は地響きするがごとくに揺れ、超重低音は鉄筋コンクリートの床に振動を与えているふうだ。にもかかわらず、大きい音はまったく不快にならず、まさにロスレスの醍醐味が繊細に現れているのである。心地よい低域の地鳴りに包まれた劇場空間は理論を越えて、映像ストーリーに馴染んだサウンドの感触は、想像を絶するほどの感銘にも浸るといってよい。すぐれた製作音響がそのまま映像に溶け込むのだ。


映画館で体感するのとは別に、ハイビジョンテレビで映画を鑑賞するにあたっては、DTS-HD Master Audioで収録されたブルーレイディスクを観るにしても、ホームシアターのようにサウンドを出さなければ、その効果音はほとんど体験することができない。画質がキレイになるだけで、DVDで単に映画を楽しむのとそう変わらない。市販のホームシアター・セットがあるだけでも、その違いは体験することができるだろう。

問題は映画からブルーレイディスク化されるときに、英語圏と日本語吹替で音声収録される際、今日では英語圏向けに焼付けされたものには必ずと言っていいほどDTS-HD Master Audioの5.1chか7.1chで収録されるのに対して、日本語吹替では多くが5.1chサラウンドに格下げされていることだ。良くても最初の頃のDTS止まりだ。スケールアップして観たくなるような昨今の大作映画は、この手が多く誠に残念だ。日本向け洋画には字幕スーパーが当たり前のようになっているかもしれないが、字幕を読みながら映画を観るのは結構きつい。映像画面が昔とは違って、VFXやCGが相当にレベルアップしているので、映像シーンが中心になり眼が離せなくなっているからでもある。今の洋画は邦画と違ってアクション満載が多く、男優にしろ女優にしろアクション俳優の多いのが見どころでもあるからだ。ハリウッド映画は物語の中身も上質になっているといえる。100年ものあいだにハリウッド映画の歴史は格段のスケールアップを披露しているし、人間性や人間愛の表現は一貫して道義を踏まえて不変であるのが実によい。正義と悪は明確に区分される。ユーモラスも絶対に忘れないのは魅力的だ。



ブルーレイに秘められた驚愕のDTS-HD Master Audio世界の実感

例えば、映画『トロン・レガシー』(2010米 ディズニー)のブルーレイディスクは英語も日本語吹替もDTS-HD Master Audio(ロスレス)の7.1chとなっており、共にMPEG 4 AVCの2層ディスク仕上げで1920×1080ドットのフルHDで作られている。オーディオ機器を通じて鑑賞すると、そこは別世界に変幻する。オーディオを通さずにテレビの音量だけでは、この映画の魅力は半減してしまう。美しい高精細な映像と共に秘められた異次元の音響サウンド世界を体感しなければ、ブルーレイがもったいないことだけは確かだ。昨今では7.1chドルビーTrue HDの収録映画もあるが、DTS-HD Master Audio仕上げの映画と比較するならば、断然その細やかな音域の違いに愕然とするだろう。実際に昨今出回るブルーレイの8割から9割がDTSの音域を採用仕上げしていても無理もない事といえる。細部にわたる集音仕上げは常に新鮮で、音自体だけでも芸術作品的である。ハイエンドのスピーカーで再生すると、それは物の見事に現われて来る。私の場合は、テレビのソニーWEGAに搭載されているダイナミックレンジの高域を鮮烈に出してくれるアルミ網目スピーカーをサブに利用している。ソニーのKLV-26HG2は画面の大きさとしては物足りないが、両サイドにアルミ網目に覆われたスピーカー群が配列してある。2つのウーファーと2つのツイーターでサブ・スピーカーの役目を果たしてくれる。マーティン・ローガンのコンデンサ型スピーカーは前後に音が出るので、ソニーWEGAのサラウンド構成とはうまく調和して7.1chとしても補助してくれるのだ。もともとが立体音像のコンデンサ型スピーカーなので、前後左右と180cm高低の音域を醸し出してくれるので、臨場感は抜群なのである(2013年後半当時まで使用)。2014年7月現在は46型TVのソニーBRAVIAに変わっているので、音響状況は異なって来ている。このことは「マドンナ」のページを参照していただければ幸いだ。

トロン・レガシー      シルク・ドゥ・ソレイユ/彼方からの物語


7.1chドルビーTrue HDのブルーレイ代表映画としては、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011米 パラマウント)があるが、日本語吹替は5.1chサラウンドでDVDの音質と同じである。ドルビーにもTrue HDとデジタルとがあり、音域幅はまったく異なる。今のところサラウンドを優先する7.1chドルビーTrue HDの音域が最もいいようだが、7.1chのDTS-HD Master Audioと比較すると、嗜好的にはマスター原音と同格の後者DTS-HD MAのほうがすばらしい。7.1ch DTS-HD Master Audioは完全なまでにスタジオ・マスターと同じレベルを再現している。本当は同じ映画で比較すべきなのだろうが、作品はどちらか二者択一で収録するようだ。『トランスフォーマー』シリーズは初めから5.1chドルビーTrue HD仕様であるし、最近の第3作目の「ダークサイド・ムーン」も7.1chに移行しただけだ。では、なぜ7.1ch DTS-HD Master Audioの方がすぐれているかといえば、音質の帯域が広いだけではなくて、なまなましい臨場感が映画のなかへと自然に引き込む錯覚にまで陥ってしまうところがあるからだ。一方の7.1chドルビーTrue HDは何度観て聴いても、音がなめらかに大きく唸っているだけなような気がする。DTS-HD MAよりも音量ボリュームも少し大きめに上げないといけない。本来、音というものにも鮮度があり、生き生きとした「なま」の感触があり、それが多彩であればあるほど臨場感に満ちて来るということだろう。DTS-HD Master Audioの理論が一般者にはよく判らなくとも、少なくとも音はマスターに限りなく近付いたとはいえる。最近このところ観て来たブルーレイの50作品の感想として、そう言わざるを得ない。

映画の内容については当Webサイトの「シネマ日記」で感想を述べればいいと思うが、ブルーレイに秘められた驚異の異次元サウンドについては、こちらの「風景が見える音の世界」で進行していきたいと思う。DTS-HD Master Audioで仕上げられたブルーレイの魅力には、今後とも計り知れない感動が待ち受けていることは確かだ。先日、家電量販店で55型と65型の4K対応液晶テレビの公開デモ映像を観て来たが、3840×2160画素数の世界一美しい映像であることを宣伝していたものの、ソニー「ブラビア」のさらなる音質追求「クリアで伸びのある磁性流体スピーカー」「これまでのテレビの常識を超える音」にまでは気を遣っていなかった電気店の姿勢は残念であった。せっかくの4K液晶テレビとの初めてのご対面だったのに、これが地方に住む現実で、都会であればドア付防音ホームシアターで体験もできたであろうか。販売店員がオーディオとホームシアターのノウハウを持つ時代だというのに、日毎、テレビ以外にも冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどの売り場でも顔を出して下手なセールスしかしていない様子は、地方のあわれな姿でもある。家電は売っても、人に夢は売っていないようである。今の時代、どんな小売店でも、人に夢を与えるような仕事をすべきかと思うが、いかに。さて、何が言いたいかというと、4Kテレビ側のサウンドがすぐれて来ると、ホームシアターとしてのその活力は絶大になるはずだからである。音の粒はサウンド空間をまるで魚のように泳ぎ、巨大な水槽のごときにもなるからだ。後方へのスピーカー配置は単に7.1chサラウンド効果のみならず、映画空間のなかを「観る」から、自らが「歩く」そして「跳ぶ」がごとくに体感できるからだ。

いずれにしても、このページではブルーレイディスクの映画作品に秘められたDTS-HD Master Audio仕様のものを主に探求していきたいと思う。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』も英語・日本語吹替いずれも7.1ch DTS-HD Master Audioで製作されているので、この大好きなアニメ映画から次回は触れてみたい。映画『シルク・ドゥ・ソレイユ/彼方からの物語』はある意味、この音域音質追求へのきっかけともなった作品なので、これにも触れてゆくつもりだ。時間がなかなか無いなか、どこまで探求できるかはまったく自信がないが、オーディオルームからホームシアターにますます取り憑かれてゆく自分を、この先もずっと楽しみたいとは思っている。CD音楽の世界もいいが、映像とサウンドづくりに関して、画質・音質の技術の限界を知らない映画づくりの世界は本当に最高だ。生演奏のオーケストラ公演や歌手コンサートのチケットは値段が高くて頻繁に行けるものではないのに対して、それに比べると映画館はまあ安いほうだろう。近頃は3Dが当たり前のように興行されているが、近眼でメガネを掛けている私のような者には、メガネの上に3Dメガネを掛けて観るのは少し観づらくて不自由さを感じている。また、これからの時代は映画館自体も上質であってほしいと思う。映像スケールや音質技術が洗練されて優れた上質の映画は、できれば上質の映画館で堪能したいものである。ドルビーアトモス(最大64ch可能)を採用したアメリカのハリウッドシアター並みにまで建設してほしいとまでは言わないが、土建国家ニッポンならば、目線を少し変えるだけで、世界一上質な映画館をつくることも意外とたやすい。それが1千年以上の歴史文化を持つ日本人の気質だからだ。


あとがき

「風景が見える音の世界」のリニューアルに、ほぼ1ヶ月がかかってしまった。別に集大成を意図したわけではないが、近年のブルーレイに秘められたDTS-HD Master Audioの魅力に触れてみたかったのだ。日本語吹替ではなく、音声は英語を選択して初めてその魅力がわかる。映画館では最近トム・クルーズの『OBLIVION』を鑑賞して、自分のオーディオの音質と比較もしてみた。人間の耳もいい加減なもので、自分の部屋のサウンドのほうが良かった。

映画館のAVアンプのやや雑な5.1chサラウンド拡声音に比べて、自分のところのオーディオアンプに無理矢理ブルーレイをつないでホームシアターにしてしまった禁断の部屋は、超重低音と中域・高域を繊細にし、大音量の迫力は圧巻で、すっかり私を陶酔させてしまうほど罪深き人間に陥れてしまった。ソニーの液晶テレビでは映画館の大スクリーンに到底及ばないのに、ああ、サウンドだけでこんなにも劇場のように豹変してしまって、神よ許し給え。というわけで、新しい映画のレンタルが次々に来るのを何としよう。映像がすごい『ライフ・オブ・パイ』に歌歌歌で字幕に疲れる『レ・ミゼラブル』、しかし映画のスケールとしては大変良質。『アウトロー』に『パーカー』、サウンドが凄い『ジャッジ・ドレッド』(昔のリメーク版だが新作のほうが好き)。そして今も元気なシルベスター・スタローンの『エクスペンダブルス2』にジェイソン・ステーサムの粋な『セイフ』等々。ますます究極のハイレベル音質・画質の映画時代となって来たことに感謝感激!

(2013/06/26~2014/07/08)
(文・ 古川卓也)
「風景が見える音の世界」に戻る





制作・著作 フルカワエレクトロン

TOP