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DTS:Xの音響を初体感!

スノーホワイト/氷の王国 (原題:The Huntsman: Winter's War)
氷の女王フレイヤが魔力で氷の壁をつくるサウンドに注目
映画は音響と共に進化する!


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DTS:Xの台頭

2016年10月5日にレンタルとセルが開始された映画作品『スノーホワイト/氷の王国』ブルーレイに、ついにDTS社の最新音響サラウンド仕様DTS:Xが搭載されていることに着眼して、レンタルで劇場版とエクステンデッド版とで映画を二度鑑賞してみた。日本の映画館では今年5月に公開されたものだ。こういった超大作映画は音響設備が現代風に充実した大きな映画館で鑑賞したいところなのだが、山口県に住むわたしとしては地方レベルのシネコン、宇部市内のシネマ・スクエア7で我慢するしかない。それか、ドルビーアトモスが設備されたシネマサンシャイン下関まで車で1時間かけて出掛けてゆくくらいしか機会はない。それゆえ、かえって、レンタルのほうが楽しみは大きい。自宅のオーディオ・ホームシアターで鑑賞したほうが、迫力があって堪能もできる。お気に入りのBDを購入すれば、また何度でも繰り返し、観たい時に観れるから重宝だ。というわけで、『スノーホワイト/氷の王国』(2016米)ブルーレイはDTS:X搭載とあって、レンタルで楽しみ、購入もした。所有すべき記念すべき1枚のBDともなった。こだわりサウンドの研究ともなり、合わせて映画作品の勉強ともなっている。

米国では作品レベルとしていろんな酷評を受けたようだが、批評家など所詮批評家にすぎず、じゃあ自分で映画を製作してみろ、とでも言いたいところだ。すばらしいお手本の作品映画を自分で作って是非観せてくれたまえ、と言いたい。批評家はペンで稼ぐのだろうから、褒めたり貶したりするのが仕事かもしれないが、立場が違う己れの分をわきまえて評価はしたほうがよい。それから大衆迎合のフォロー数に惑わされぬことも大事だ。やたらフォロー数に靡く意志の希薄さも問題かもしれない。人がどう評価するかが大事なのではなくて、自分はこのように受け留める、といった深い吟味の上でのオリジナルな思考表現のほうが大事ではなかろうか。99人がNOであっても、1人がYESとみる不均衡バランスの哲学があってもいいのである。そこからオンリーワンが生まれ、個性も生まれる。文豪や魁傑やヒーローたちは、そういったアウトサイダーから生まれてもいる。

この映画の製作費1億1500万ドルという金額はアメリカではざらであるが、日本ではとんでもない破格の映画製作費に該当する。映画製作への意気込みの違いというよりも、日米の俳優レベルや映画学科文化レベルの違いである。また先進的な映画技術の違いでもある。日本にも私立のみならず国立の舞台芸術を学べる演劇専門大学が欲しいものである。この基本的な舞台芸術の欠落が、日本の若者たちから夢を削ぎ、大いなる損失を蒙っていると言えるだろう。国立大学に演劇科を設けることは、日本映画が国際的にも大きな躍進をすることにもなる。世界的スーパースターを目指さない日本は、いつまでも諸外国のスターに憧れるだけの人材しか育たないことを意味する。日本はもっと国をあげてハリウッド映画に学ぶべきであろう。日本映画と洋画がこんなに差が付いてしまったのを、日本政府はいまだに何とも思わないのか。ひょっとして日本映画の貧作は、政治問題なのか。そんなバカな話に発展させたくはないのだが、この国はいつまで鎖国状態なのだ? 日米同盟って、日本がいつまで経ってもアメリカを超えてはならないポチなのか? そろそろ愛犬ポチも老犬六代目くらいじゃないの。まあ、話が逸れてしまうので、本題に移るとしよう。

  


心地よい音

そもそも心地よい音とは何か。オーディオアンプが昔から好きだったわたしは、AVアンプで音をいじくるのはどうも好きになれなかった人種である。つまり映像主体よりも音質が何より最優先だったのだ。映像がいくらキレイであっても、音が不愉快であれば論外なのである。テレビ番組を見ているのであれば、別段音などどうでもいいのだが、映画をホームシアターで観るということになれば、それなりのこだわりが生じる。今回、購入した『スノーホワイト/氷の王国』BDでもあらためてもう一度初めから鑑賞してみた。計3回鑑賞していったわけだが、3回目は分析と検証のために、途中で一旦停止をしては納得がゆくまで聴き返しながらメモ書きもしていった。もちろんすべて字幕で鑑賞し、吹替では観てない。英語の原語でないと作品のよさが味わえないからである。それに、この作品のナレーターがリーアム・ニーソンというからすばらしい。低い声で、『96時間』シリーズのリーアム・ニーソンがナレーターを務めていたなんて、最高だ。英語で聴かないで、当人の生まの声で聴かないで他にどんな意味がある。BD+DVD2枚組のジャケット裏側には、ナレーターが誰だなんて何も書いていないのも当然ではある。

そして、この映画のみどころは何と言っても役者が揃っているのがいい。美貌にして邪悪なラヴェンナ女王にシャーリーズ・セロン、その邪悪な女王の妹である氷の女王ことフレイヤにエミリー・ブラント、ハンターのエリック役には『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』ですっかりお馴染みになってしまったクリス・ヘムズワース、その恋人役サラに『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステインという顔ぶれだ。それに加えて、ひねくれた男女4人のドワーフの存在が愉快でたまらなくいい。すべてそれぞれの持ち味が一級品となっている。さらに登場して来るゴブリンの存在もすばらしい。この手のキャラクターをVFXで表現してゆくのは、今やハリウッド映画ではおてのものだが、長きにわたるビジュアルエフェクトの熟練作業と熟成したサウンドエフェクトとの融合は、毎回エスカレートしていって常に眼を瞠るものがある。今回の『スノーホワイト』編にDTS:Xが採用されたことで、ゴブリンが突然頭上から現われたり、森の奥の樹林から跳びはねながら迫って来るシーンなどには、実に3D空間を縦横無尽に音域さえ操っているのがよくわかる。まさにDTS社の目指す「TRULY 3D SOUND」がここにあるようだ。映画の流れを包み込むリスニング・バックにはオーケストラの音楽が控えていて、前面に人やキャラクターが動きまわっている。怪物ゴブリンが威嚇しながら吼えるシーンがあるが、音質はいたって映像に対してナチュラルで、本当に存在するかのような怪物の雄叫びらしい効果音がよく出来ていた。実に洗練された闘いの場面だ。DTS:X音響を楽しむには闘いのシーンが最も相応しい気がする。100インチ程度の大きなスクリーンで鑑賞するのが本当はベターだ。わたしのマーティン・ローガンのスピーカーは182cmで普通の人の背丈よりも高いので、音域は抜群なのだが、肝心の映像が現在46インチの液晶画面とあっては、やっぱり不甲斐ないといえる。下から50cmの高さに液晶TVを置いているが、せめて65型の4K液晶TVがほしいところではある。

それにしても、DTS:XがDTS-HDマスターオーディオ7.1chからどれほどの効果が得られたかを検証するまでもなく、天井側にもスピーカーを配置して聴くドルビーアトモスと並んだわけだが、BDとしての音質比較としては、アトモス仕上げのほうがメリハリがあって優位とも取れる。ここで言うメリハリというのは、アトモス仕上げのBD作品はわが家の2chスピーカーから立体音像の音がとんでもないところから出現するばかりではなくて、あらゆる音域帯に対して精密な表現が濃厚であること、その分、迫力が伝わる。ドルビーTrueHDは分散が足りないのか、DTS-HDマスターオーディオ7.1chには劣る気がしている。後者のサウンドは音の奥行感が激しい音であっても、常に感触がいいほどに滑らかで聴きやすいのだ。前者のドルビーTrueHDには、その聴きやすい滑らかさが不足しているような印象で、時に耳を塞ぎたくなるような不愉快な金属音のようなものが混在して来るのはどうしてなのだろう。だからなのか、BD作品には圧倒的にDTSで仕上げられているのが多いようだ。しかし、ドルビー社のTrueHDからアトモス仕上げの作品になると、こちらのほうがDTS仕上げのものより優位に思える。われわれ視聴者にはBD製品の仕上げに対して選択は出来ないけれども、アトモス仕上げの魅力とDTS:X仕上げの魅力との相違に関して言えば、まだ若干アトモス仕上げのほうが優位な気がしないでもない。アトモス仕上げのBD製品はたくさん市場に出ているが、DTS:X仕上げのBD製品は現在のところ全く以って数本しかないので、これからの両社の戦いということになるのだろうか。映画界を席巻するドルビー社と、BD販売で優位に立とうとするDTS社との競合は、いい意味で、家庭でホームシアターを楽しむ視聴者の増加につながることだけは間違いあるまい。

今回は映画『スノーホワイト/氷の王国』の音響について大雑把に探ってみたが、DTS:X仕上げが従来のAVアンプ使用者ユーザーのホームシアターとは異なって、わが家のような2chオーディオアンプでホームシアターも兼ねるアウトローのユーザーによる感想であるがゆえ、偏見を抱かれる見方もあるかもしれない。フルレンジのコンデンサ型スピーカーが、なにせスピーカー・パネルの前後に音を出すものだから、十畳部屋のキューブで立体音像が満喫できる以上、こんな感想もあってもいいのではないかと思う次第である。フェイスブックもツイッターも設置しないWebだから、別段、他人の意見もあえて求めてもいない天邪鬼とでもみていただければ結構だ。わが家はオーディオルームとホームシアターが共存する、いわばオーディオ・ホームシアターとでも呼ぶべきものなのかもしれない。あるいはオーディオアンプ応用編とでもみるべきか。次回はまだまだ『スノーホワイト/氷の王国』で言い足りなかった事がたくさんあるので、DTS:Xがこの部屋でどんな音の気流を発生しているのか図式と合わせて追記したいと思っている。

文・古川卓也
(2016/10/17)



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制作・著作 フルカワエレクトロン

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