クリスマス・キャロル 「いいか、羽はこうして広げるんだぞ。そして、ゆっくりと上下に振るんだ。足はそんなに踏ん張らなくてもいいぞ。羽ばたきさえ上手になったら、体はちゃんと浮くからな。いいか、見てろよ。羽はこうして優しく広げて持ち上げ、力をゆっくり抜く。あわてなくてもいいぞ。まあ、深呼吸みたいなもんだ」と寿三郎は白梅の前で羽ばたきの仕方を何度も見せて言った。白梅の本番を前に、この二週間ずっと同じやり方で練習をして来て、よもぎはすでに飛べるようになっていたが、末っ子の白梅だけは足の障害からだいぶ出遅れていた。 「お父さん、見てて。今日は絶対に飛ぶから」と白梅は力強く言った。「よし、いいぞ」と寿三郎も促した。白梅は小さな羽で何度もバタバタと羽ばたきを繰り返してみせた。体は浮かなかったが、一旦巣から飛び出せば、何とか飛べそうに思えた。「じゃあ、一緒に飛んでみようか」と寿三郎が誘うと、白梅は少し怯んだが、「お父さんとなら心配は要らないから、大丈夫よ。あなたもナナに似て、とっても優雅な飛び方をするわ」とハルも励ましながら、にこやかに白梅を抱き寄せた。狗留孫山の寿三郎の巣は森の中の樹木にあったが、地上からの高さは二十メートルくらいある。 「白梅よ、お前の羽はとても美しいから、みんなに見せてやれ」と寿三郎は言って、白梅と共についにこの日、空を一気に舞った。と、白梅は羽ばたきしながらも急降下してしまった。寿三郎は素早く白梅の真下に滑り込んで、自分の羽でキャッチ |
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』 (2020/12/25) |ホーム| |