小説の舞台

風景は
躓いた心を
優しく包んでくれる

行き場を失った翼の心に
偉大な風景はそっと寄り添い
私に秘密を明かしてくれた

弱い自分が
強靭な心を生み
私の小説は
そこから生まれている


 短編小説『おいちぃ』に出て来る上高地は、私が若いときに何度か行った場所である。運が悪いと釜トンネルが積雪で通行止めとなり、ゲートが解除される初夏までは待たなければならない。今回は上高地を舞台にしたものを描いているが、これまでの短編作品に出て来る小説の舞台には、私の実体験がほとんど基になっている。『手』は金沢で働いていた印刷工場での体験談であり、『篝火』は京都に住んでいた頃に仕事を転々としながらも、そこで暮らす人々の人間模様の片鱗を描いた。『岬の蜂』では横浜に住んでいた大学生時代の友人を描いた。良質
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』

(2021/01/18)

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