んだから、何とかならないかしら」と言った時、私はカチンとなって「ざけんな。よく言うぜ」と切り返して彼女を睨み返したのだった。
「オレがどれだけ苦しんでたか、判らなかったのか? 突然、別れてほしいって言ったのは、キミの方だぞ。新しい彼氏が出来たから、別れたいって。しかも相手がヤンキーでカッコいいとか何とかで、ただ外見だけで、二枚目だったら、誰でもいいのかよ。同棲相手のオレがいてさ、いきなりそいつと付き合うか? とっかえひっかえ、すんじゃねえ。何なんだよ。確かにオレは二枚目じゃねえし、齢もひとまわり離れてるし、貯金もあまりねえしよ、これっちゅう取柄もねえしなあ。まあ、平凡なネクタイしたサラリーマンってとこか。でもよ、キミとは恋愛感情を持っていたし、キミにはオレの人生すべてを捧げようって決めてたよ。なのによ、また、いきなり現われて、この始末かよ。子供はヤンキーの子だったじゃねえか。あの時、自分でハッキリそう言ったよな」と私は、過去を振り返りながら語気を強めて言うと、
「違うの。本当は違うのよ。あなたの会社に行って、赤ん坊を抱いてもらいたくて行ったの、憶えてるでしょ? 計算してみて、別れてから半年で今の旦那の子供が産まれるわけないでしょ。今の旦那の子供じゃないのよ。成人式の年のことだから、わたしもまだ幼稚でバカだったのね。でも、これでも、子供だけは一生懸命育てて来たつもりよ。わたしのお腹の中から産まれて来てくれたんだもの。父親は誰だっていいって思ってたのは、浅はかだったわ。当時のわたしは子供だけが欲しかっ
         ( 18 )       おいちぃ < 2 >
短編小説集『ブルーベリーの王子さま』

(2021/01/12)

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