たのね。本当にバカ娘だったわ」と元カノは言い訳を続けた。 「今は旦那の娘もいるんだけど、二人」と元カノ。 「なに、娘が二人? ガソリンスタンドで働いてて、息子と合わせて三人、よくやってるよな。で、キミも今は働いてるのか?」と私が訊くと、 「最初の頃とか、出産の頃とかは無理だったけど、下の娘が産まれて翌年に旦那の借金を知ったのよ。何か様子が変だったから、娘の衣類さえケチるから、おかしいと思って問い詰めたら、気を失いそうな金額で、子供たちと無理心中か夜逃げしか考えられなかったわ。だって旦那の金銭感覚、普通じゃないもの」と元カノは言った。 「どれくらいの借金なんだ?」と私が訊くと、 「こわくて、言えない」と抜殻のような顔が、色白以上に真っ青にも見えた。そこからは沈黙したままだった。一時間以上も黙り込んでいたが、「おくは、いたいの」と言ったので、 「なに、奥歯が痛いのか?」と私が訊くと、 「ううん、歯じゃない」と元カノ。 「歯じゃなかったら、何が奥なんだ。どの奥なんだよ? まさか、億単位の借金じゃねえよな」と私が言うと、元カノは項を垂れて「うん」と小さな声で頷いたのだった。 「そうか。よくそんなに借金が出来たなあ。担保は旦那の親の土地と屋敷か? 不良息子がそんな放蕩できるのは、親の家柄しかねえからなあ」と私は言いながら、 「そりゃあ、さっさと別れて、親子心中か、また、いい男みつけて再婚でもしろい」と私は冷たく突き放した。 |
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』 (2021/01/12) |ホーム| |