た。ミルクは三つ年下の後輩で宮野結奈の名前だったが、ウエストが細いわりには、ふくよかな体型の持ち主でプロポーションがひときわ目立っていた。社内で仲のいい間柄では、宮野さんより「ゆな」さんか、ミルクの愛称で呼び合っていた。飲み物は何が一番好きかと伊津子が聞いたら、結奈本人の口から「ミルクです」と答えてからは、仲間のあいだで自然と「ミルク」と呼ばれるようになってしまった。「わたし、ミルクですか?」と結奈が伊津子に確認すると、「ミルクって呼んだら、これ、パワハラかしら? ミルク、好きなんでしょ?」と伊津子は言った。「ミルク、大好きなんですよ。ストレッチしていると、野菜と牛乳が欠かせなくて」と結奈は伊津子に答えた。それ以来、結奈は伊津子らとの仲間入りとなり、伊津子も大切な部下として待遇するようになっていた。伊津子は親友の蕗子と同じ二十六歳である。
 早瀬菜々実も同期入社で同じ年齢だったが、配属がバイオメカニクス研究所の所員として破格の厚待遇給与を受けていて、蕗子の営業社員給与とは雲泥の差があったものの、菜々実の誠実さと飾らない性格が、二人を惹き合わせていた。そもそも学歴も部署も違い、リケジョの菜々実とは社内で顔を合わすこともない二人だったが、ある日昼食の献立をきっかけに、社員食堂の丸いテーブルで、同じ食事メニューが偶然何度も度重なり、「ここの日替わり、ほんと美味しいですよね」と互いに会話が弾んでからというもの、気が合うようになって、いつからともなく友達になっていた。
「菜々実の彼氏、憎らしいほどイイ男よね。もうすぐ式も挙げ
         ( 37 )       バレンタイン < 2 >
短編小説集『ブルーベリーの王子さま』

(2021/02/08)

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