そうよ」と蕗子が言うと、
「うっそ。そうなの? ゴールインしちゃうんだ」と伊津子は羨ましそうな顔を浮かべた。
「菜々実はさあ、努力家じゃない。環境とかイヤな人間関係にもめげないし、絶対幸せな家族を築きそうよね。菜々実が一番乗りだわ」と蕗子は言った。
「ふきちゃんの方は、どうなのよ?」と伊津子が訊くと、
「わたしは相変わらずだわ」と蕗子。
「何が相変わらずなのよ。マイキーとはどうなの。わたし、知ってるんだから。化研の前川チーフから直接聞いちゃった。義理チョコって、意外と威力があるのよねえ。筒抜けだったわよ」
「えっ。知ってたの?」と蕗子は顔を赤らめて唇を尖らせた。
「だって、悔しいじゃない。ふきちゃんの片想いにマイキーの奴、全然気が付かないし。まあ、でも、もともと彼女がいたんだから、仕方がないか。独身であるかぎりは、チャンスは平等に訪れてもいいんだけど、ま、今回は乙女心とはきっぱりと切り捨てることね。もう乙女でもないし」と伊津子はストレートに蕗子をなだめた。
「なにそれ。乙女じゃなかったら、わたしって、あせってみえる?」と蕗子が訊くと、
「ううん。ていうか、選ぶのも大事よね。結婚願望は焦りの始まり? 恋愛は運命のときめき? 好きになってしまうのは、どうにもならないでしょ、ふきちゃん」と伊津子は言った。
「女は誰かを好きにならないと、やっていけないのかなあ。マ
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』

(2021/02/08)

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