しばらくして、キッチンの方から伊津子がみんなを呼んだ。
「みんな、こっちにいらっしゃい」と言われ、蕗子と菜々実と結奈はソファから立ち上がって、キッチンのある茶の間の方に移っていった。意外と広いダイニングルームだった。
「先にシチューからどうぞ。朝からいろいろ準備してたのよ。お味はどうかしら。わたし好みの味なんだけど、隠し味にホワイトチョコを少し使ってるの」と伊津子は言った。
「器もステキ!」と結奈が叫んだ。すると、
「これは北欧デザインのボールよ」と伊津子が説明した。アラビアの食器で、内側は白く外側にはムーミンの図柄が可愛く描いてある。
「ルーは少し濃厚だけど、白菜をトロトロにして、タマネギとニンジンはオーガニックね。じゃがいもとマッシュルームも入れて、オリーブオイルは適量ね。みんな、味見してみてちょうだい。わたしはクセになっちゃったんだけどな」と伊津子は、手作りのクリームシチューを皆にすすめた。
「これはイケてる。わたし、いっちゃんの作ったシチュー、初めてよね」と蕗子が言うと、
「能ある鷹は爪を隠す、ってね」と伊津子がささやいた。
「美味しい。このレシピ、後で教えてね」と菜々実が言うと、
「お姉さま。このわたくしめにも教えてくだされませ」と結奈も言った。
 シチューを啜りながら会話がはずんでいたら、どこからともなく軽音楽が流れていた。伊津子がテーブルに置いてあったリモコンを操作して音楽をかけていたのだった。壁際の台の上に
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』

(2021/02/08)

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