らいって言ってたから、あの大名桜とおんなじ年齢だね。来年の春になったら、夢ヶ鼻の花見に行こうかな。杉崎くんも行こうよ」 「いいですね。あそこの花見は樹木の形が末広がりに見えて、とてもいいですよね。行きましょう行きましょう」と私は話が逸れてしまったが、百五十歳の中山先輩と話すと不思議なほど楽しくなるのだった。中山先輩の性格なら、きっと良い家庭が持てると思った。どういう女性とめぐり会うのかも興味が湧いた。頭が少し変ではあるが、性格がとても優しいので幸せな家族が築けそうだった。その上、力持ちで仕事をとても大事にしている中山先輩こと中山弥多兵衛の 同じ釜の飯を食った中山先輩が、それから二年後、なんと労災病院で私が世話になった看護師さんと結婚に至ったとは、正直びっくりした。先輩の猛アタックで交際が始まったようで、あれほどの美人でありながら独身で彼氏いない歴がずっと続いていたとは、これにもおどろいた。まともに恋愛もできないと言っていた看護師さんの看護職は、私のような凡人とは違って想像を絶する忙しさなのだろう。それにしても、中山先輩が意外と手が早いのにもおどろかされた。そして、その新婚の先輩から「家庭はいいぞ。杉崎も早く家庭を持つといいな」と言われて、二十八歳の私はまったく恐れ入ってしまった。(完) |
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短編小説集『ブルーベリーの王子さま』 (2021/05/24) |ホーム| |