と由良之助が言った。 「本当はもうあの世を 「なんだ、わかってたのか。ワシの姿は、お前さんの眼には、どんなふうに映って見える?」 「赤く腫れた顔の死刑執行人さ」 「具体的に、どんな顔なんじゃ?」 「目も無く鼻も無く捉えどころのない赤い 「ほう。肉体から切り出した癌のようなものか。そいつは歩くのかい?」 「そこに立ってるじゃないか」と言って、史郎は由良之助を睨んだ。 「まあまあ、そんな難しいお話し、つまんないわ。ねえ史郎、わたしの唇、舐めてみない」とナマコの不夜子が史郎に近寄って来た。 「甘いハーブ味を塗ってみたのよ。きっと好きな味になると思うわ」と不夜子。 「あ~ん、ずるい。不夜子姐さんったら、ちょっと、史郎から離れなさいよ」とクラゲの芽芽子が二人の間に入って、不夜子を押しのけた。 「ね、史郎。部屋から出ましょ。二人きりでお話ししたいの」 |
( 72 ) 薄青い空 < 3 > |
短編小説集『ブルーベリーの王子さま』 (2021/08/12) |ホーム| |