サシン・ティプチャイ (Sasin_Tipchai)  作品 「本(Book)」



心に残った画像(2)心に残った画像(1)ホーム
心に残った画像  (2)

Photo asian 2024


文字サイズの変更: |

 勉強

子供たちは何を読んでいるのだろう。亜熱帯雨林のなかを太陽の光が差し込み、読書の世界に明るく照らし出された希望の光は、周囲をも明るくする。題材は作られた構成のなかで、子供たちがいかに希望に満ち足りた未来の存在であるかを主張している。日本では考えられないほどの純心さが伝わって来る。今の日本の本屋に置いてあるカメラ雑誌でもカメラのネットショップでも、ただ新型のカメラ本体とレンズを売りたいだけの宣伝だけに終始している。紹介された写真がどんなにたくさん紹介されたところで、私の心がいつの間にか靡かなくなってしまったのは、どうしてだろう。まるでアナログ音量計のVUメーターの針が全く触れなくなってしまったかのようだ。無反応なのは、けっして私がカメラ撮影に興味が無くなってしまったからではない。被写体に幻滅を感じるようになったからでもない。自分の心が空虚になってしまったからだろうか。

人間の歴史を古代から近世、そして現代に至るまで、世界を問わずこれまで好きでそれなりに勉強もして来たが、あれほど夢中になって読んでいた歴史の文献は、いまや本棚に放置されたままだ。蒐集して来た貴重な文献資料は、あたかも空中分解して雲散霧消してしまったかのようだ。この世の中に無駄なものは無いと言うが、長い年月と時間をかけて徒労に終わってしまうのも、己れ自身の虚無を知ったからかもしれない。何の才覚もないことは、けっしてレゾン・デートル(仏: Raison d'être)を否定するものではない。大会競技で敗者にされようとも、〇〇大賞に落選しようとも、生活再開にメドが立たずとも、学校成績が悪かろうとも、すべての命に無駄は無いのが仏教の訓えであろう。植物も動物も昆虫も鳥類も魚類も貝類も、すべて光と水なくしては生きられない。第三次世界大戦を目論む愚かで悪党な人間がいないかぎり、すべての命は大方担保されるのだが、その悪党たちに存在理由は充てられないが、どうして人間は平和になれないのか、きっと勉強が足りないからだろう。点数が悪くても、人にやさしくなれる勉強はとても大事だと思うのだが …… 。

(2024/10/01)
 古川卓也

サシン・ティプチャイ (Sasin_Tipchai)氏の世界
Photo : sasint - Pixabay
心に残った画像(2)に戻る 





制作・著作 フルカワエレクトロン

TOP