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亜熱帯樹林の滝のある水辺の前でひとやすみする女性は、まるで菩提樹の幹にでも座る観音様のように美しい肢体を投げだして、静かにくつろいで見える。艶やかでなまめかしい水月観音半跏思惟像のようにもみえる。瞑想するでもなく、よく働くごく普通のうら若い女性のようだ。滝の手前にある樹木の葉が頭上で光を受けて神々しいカメラ・アングルは素晴らしい。

写真家にとって光り方の表現は難しいと思うのだが、この風情をいとも簡単にものにする手さばきは、熟練した積み重ねの賜物であろう。賞を獲るための意図もなく、ごく自然な被写体への情景しか感じられない。高温多湿の熱帯モンスーン気候のタイならではの構図といえるだろうか。さりげない感動がある。日本のように意図と作為にこめられたおぞましい広告の氾濫写真に取り囲まれた日常にあって、このようなサシン・ティプチャイ氏の自然な画像に出会えたことは何より嬉しい。