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こんな面白い記念撮影、見たことがない。どこかの学校で学生たちに集まってもらって、「はい、手を挙げて」の記念撮影なんだろうけど、あどけない一人ひとりの表情がごく自然で、豊かな個性をそれぞれが何とも言えないポーズで現わしている。撮ろうと思って撮れる写真ではない。学生たちと写真家とのコミュニケーションがとてもいい感じで朗らかさが伝わる。写真の原点がここにあるような気がする。

最前列の向かって左側から５番目の女の子は、記念撮影など気にもせず明後日(あさって)の方角を向いて上(うわ)の空だ。でれっと両腕を下げて、だるい感じに見える。その自然なポーズが可愛い。同じく最前列の向かって右側から２番目の女の子は、腰に手をやり眠りかけている。その子の左肩に手を乗せた右端の女の子は、美しい白い歯並を浮かべ、眠たそうに笑っている。きっと明眸皓歯の美人さんなんだろう。撮影を構えてから、いったいどれほどの時間が経過しているのやら。写真家は何かをしゃべりながら学生たちのご機嫌をとるために、一生懸命に笑かせようとしているのかもしれない。そこが何とも微笑ましい光景だ。

時間に追われない自由な規律もみえてくる。最上段列の向かって右側から２番目の男の子は、「はーい、タッチ」ではなく、掌(てのひら)を外側に向けて、まっすぐ上に両腕を挙げ、舌をペロリと出している。その周りの学生たちはみんな両掌を挙げて明るく笑顔で応えているのに、人と違った個性を全開しているのはいいことだ。みんな違って笑顔と掌で応える姿は、素直で実に健康的だ。最上段からすぐ下の列の向かって左端の太った男の子の健気な笑顔は、この記念撮影でとても好印象を与える。若さ、青春、活気に漲る時間ほど有意義な時はない。みんな若々しい命のバイオリズムが素敵だ。