MUSIC WORLD
栄枯盛衰。栄えもしなければ枯れもせず、のらりくらりとわが当店は音楽を友とし、今年で25年もの歳月を閲する。電子部品販売の仕事を、実店舗で11年経験を積み、自分で創業したネットショップを25年ほどやって来て、電子部品販売の経験は合わせて36年になるが、これといったスキルもなく電子工作のスキルも全く身に付かなかった。ただ、販売に徹するならば深い技術は避けるべしとも言われ、浅くとも広い部品知識は持つべしとも言われて来た。ただただ販売経験だけの年月ばかりで、世間ではこれをマンネリとも呼ぶだろう。移ろう時代の変化は、電子部品の世界にも波及し、消えゆく部品もあれば新たな部品も生まれて来るのが世の常である。
さて、音楽無くして生きてゆけないわが道は、ビートルズが来日した頃から音楽というものに刮目され、中学生の時に親からナイロン弦のクラシックギターを買ってもらい、『禁じられた遊び』などを習得してよく弾いていたが、その後にフォークソングなども楽譜を見ながらよく歌っていた。スチール弦のアコースティックギターやエレキギターにも憧れを抱いていたが、フォークよりエレキサウンドに触発されて、『霧のカレリア』を演奏していたザ・スプートニクスや、ザ・ベンチャーズの『パイプライン』や『朝日のあたる家』『ダイヤモンド・ヘッド』『キャラバン』などに衝撃を受けて、それらのレコード盤も買ってもらっていた。が、やがて高校に入学する頃にはソニーの黒い縦型ラジカセ「デンスケ」を買ってもらい、FM放送はわが偉大なる世界音楽の宝庫へと導いてくれた。日本のグループサウンズも数々と限りなく聴いていたが、世界にはもっと刺激的な楽曲が渦巻いていることを知った。世界のヘビメタロックはその頂点に君臨しているようにも思われた。
時の流れは早いが、音楽は年齢をいくら重ねても永遠のボルテージであり、今も音楽無くしてとても生きられそうにはない。映画のサウンドトラックからポップスやヘビメタのロック、はたまた日本アニメのサウンドトラックまで、音楽はわが命のすべてともいえる。自分の車の中であれ、自宅のオーディオであれ、ラジオ番組に流れる歌であれ、NHKのTVのど自慢に至るまで、音楽という音楽はまさに人生の伴侶でもある。クラシックであれ歌謡曲であれJAZZであれ、好きな曲に出会うと自然と耳を傾ける。ジャンルにこだわらず、天邪鬼に見えようとも、求めるメロディーとの出会いは普遍に続く。昨今のラップ系ミュージックにはなかなかついてゆけないが、歌詞をいくら追いかけてもよく解釈されず、格好だけの、あるいはスタイリッシュ系の表現者のようにもみえるが、歌詞の一行一行にはどうやら恋愛事情のものらしいことが何となくわかる。社会的コンテンツは忖度されてて避けているようだ。賢明なのか分が悪いのか、音楽に巧みな計算も垣間見える。楽しそうなんだけど、心に響かないのは残念だ。音楽にはやはりメロディーが肝心ではなかろうか。カッコいいラップ調よりも、いっそ極めた情感豊かなダンスのほうが見応えはある。
2019年『DANCE CLUB CHAMPIONSHIP 第7回全国高等学校ダンス部選手権』で優勝した大阪の同志社香里高校ダンス部が踊った『刻韻』のパフォーマンスは最高だった。世界一のダンス披露に思われた。あの圧倒的な規律と静寂を内側から破る小刻みなリズムと、曲半ば頃のアラブ的要素を含んだ意味深い背景音楽は、精緻なシンメトリーを生み、腕がもげるのではないかと思えるくらいの柔軟さで、美しい筋骨の成長を裏付けるものでもあった。また、赤と黒を基調とした自分たち手作りの長い衣裳もすばらしかった。2019年この時の高校生ダンサーたちだけしか行えなかった珠玉のダンス作品は、日本のトレンドとしても永久保存版にしなければならない。これを感動と呼ばすに何と言おう。凄いオリジナルダンス作品である。これは進化系ダンス入りの複合型現代音楽の象徴かもしれない。このような息を呑む圧巻のパフォーマンスは、インパクトが重厚で終生忘れられないものとなった。
(2022/01/26)
イラスト・文・ 古川卓也
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