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映像とオーディオ

映画『ジェイソン・ボーン』  2016年10月7日全国劇場公開

ジェイソン・ボーンが帰ってきた。ボーン・シリーズ第5作目が出来上がっていたとは露知らず、つい最近になって知った。CSのムービープラスで映画公開の宣伝で初めて知った。しかも日本ではこの秋、2016年10月7日(金)に全国ロードショーとのことで、早速市内のシネコン映画館まで足を運び、薄いチラシの宣伝パンフレットを持って帰った。えっ、いつから出てたんだろうと、じっと眼を凝らし続けた。ほんとにマット・デイモンの顔が印刷されてるではないか。いやいや、これは大変なことになったと思いつ、えっ、やっぱり生きてたことに脚本が仕上がっていたんだ、とあらためて感銘した。まだ第5作『ジェイソン・ボーン』を観てもいないのに、感動してしまった。まだ観てもいないのに感動するのもおかしなことと思われるかもしれないが、第1作目から第4作目までを観て来た人には、きっと理解してもらえるだろう。なにせ第4作目『ボーン・レガシー』にはマット・デイモンことジェイソン・ボーンが不在のなかで映画は出来上がっていたのだから、この違和感には誰もが共有してた気持ちのはずだからである。ジェレミー・レナー演じるアーロン・クロス役が主演となって出来上がった映画で大変な醍醐味ある作品に仕上げられていたわけだが、これはすなわちジェイソン・ボーンが死んだことによる主人公の代役とでもいうべきなのか、物語の原作から逸脱した新たな脚本へと導かれざるを得なかった映画製作上の一身上の都合のようなものによって生まれた産物と言っては語弊があるが、まあ、こういうことも起こりうる化学反応の映画作品としてわれわれは楽しませてもらった、というところだろう。

ボーン・シリーズはすべてロバート・ラドラム原作で、映画『ボーン・レガシー』(2012)は監督・脚本・原案をトニー・ギルロイがつとめているものの、今回の映画『ジェイソン・ボーン』(2016)では第2作『ボーン・スプレマシー』(2004)と第3作『ボーン・アルティメイタム』(2007)で監督をつとめたポール・グリーングラス監督が脚本・製作にも携わってマット・デイモンと再びタッグを組んで復活しているところに、本来のジェイソン・ボーンが9年ぶりに出現した意味もありそうだ。まさにボーン・アイデンティティーとなって、今回の宣伝文句「新章・始動」というわけだ。そして「取り戻した記憶すべてが覆された時、新たな戦いが始まる」ことになるようである。さて、となりの美女は今最も旬なアリシア・ヴィキャンデル。当こちらの「映像とオーディオ」でも紹介した映画『エクス・マキナ』(2015)のアンドロイド役で新進女優として只今ブレーク中だ。さらに、『エクス・マキナ』がついにブルーレイとして登場する。この秋11月18日(金)にリリースされる。映画ではDTS:Xサウンド仕様だったのに、ブルーレイでは5.1chのDTS-HDマスターオーディオとのこと。う~ん、もったいない。でも映画を観ることができなかった私としては、ブルーレイで充分満足だ。発売日がとても楽しみである。公式サイトへは下の『エクス・マキナ』画像をクリックしてね。『ジェイソン・ボーン』も画像クリックで公式サイトへレッツ・ゴーだよ~ん。『エクス・マキナ』は地方の宇部にはやって来なかったけど、『ジェイソン・ボーン』はわが田舎町にもやって来るので超うれしい。長生きはするもんだねえ。これからもささやかな幸せが次々にやってくるだろうか。最近では『オデッセイ』(2015)が映画館で鑑賞した最後だったかもしれない。

(2016/09/26)



映画『X-ミッション』 (2015米 114分)
   (原題:Point Break) ブルーレイを鑑賞

ノーCG超絶リアルアクション映画として評判の高い『X-ミッション』をレンタルで借りて観た。ブルーレイも珍しくずらりとたくさん並んでいたので、これは期待ができると思った。映画としてと言うよりも、さまざまなトップアスリートが俳優に代わって危険極まりないスタントをするので興味深かった。物語よりも世界各地の秘境のような大自然を相手に格闘してゆくシーンに注視していった。吸い込まれそうな大自然というよりも、これが地球原始の姿のままに今も残っているのが不思議なくらいで、神秘的でダイナミズムを与えてくれるのは、やはり超絶アクションを披露してくれるスタント陣の力といえるだろう。人間ワザとは思えないような過激でメチャクチャな場面に何度も遭遇してゆくが、これを無理矢理、映画の枠に格納しようとすること自体が無謀な気もする。ホンマかいなと思わせるシーンが随所に出現してくるが、スタントや俳優が実際に死んではならないので、最低限のCGアートとVFXが仕掛けられてはいるようだ。ビジュアル・エフェクトに勝る膨大なカメラワークの配置がまた頗る素晴らしい。カメラオペレーターからドローン・カメラのデジコプターパイロットに至るまで、ありとあらゆるスケール感でロケを進行してゆく撮影作業は難関をかなり窮めたのではなかろうか。たくさんのアスリートを多用するばかりではなく、本来ストーリーを作っている俳優のギリギリまでのカットシーンも大変だったと思える。俳優たちの肉体もそれを物語っている。エキストラを含めた撮影クルーの集団は、半端な数ではあるまい。極限を取り囲むシーンの背後には、大勢のスタッフが絡んでいたに違いない。画面には見えないが、正気の沙汰でないことだけは判る。こうまで映画作りのために関わる監督が何者なのかは、『ワイルド・スピード』シリーズの撮影監督でもあるエリクソン・コアが請け負っているところに、この映画の醍醐味が味わえるというものだろう。まさに納得だ。

BDメニュー画面から、早速サウンドがすばらしい。気持ちいいオーディオホームシアターの低域と、これから始まる本編の激烈なスタートを予感させてくれるいい音楽が流れる。地球原始の襞の尖端をロードにしてしまう、そんな地形をいきなりモトクロスで走り抜け、最後には聳える大地の絶壁から、20mは跳ばなければならない切り立つ小さな面の崖に飛び移る場面は、圧巻だったというよりも、いったい誰がそんな無茶をするのか狂気としか思えない。本当に本当の実写なのか。おそらく失敗した時の安全フェンスのようなものが画面には見えなくても下で施工してあるような気もする。そこでの背景はCGに少しだけすり替えてはいないだろうか。そうしないと映画作りは観光地区当局の行政から許可されないのではあるまいか。これらのエクストリーム・スポーツ界で世界屈指のトップアスリートが命懸けの荒業を見せてくれるが、この映像は本当に本物なのかと疑いたくなるほど刺激的だった。映画の終了後のエンディングで各国のスタント陣が紹介されるが、ドイツ・オーストリアで14人のアスリート、ハワイで13人、タヒチで12人、ベネズエラで8人、メキシコで5人、イタリアでスノーボードが5人、スイスで5人、アメリカのアリゾナで4人、アメリカのユタ州で6人、フランスで2人、物語とは別にいったい何人のプロ集団がこの映画のために参画していったのだろう。巨大な波に乗るサーファーたちや、まったく人間ムササビになってしまうウィングスーツ・フライングで山岳渓谷を時速250kmで落下してゆくシーンは全く以って異常。今にも崖に激突しそうだった。この同じコースを60回も練習して来たと映像特典にはあったが、笑えそうで笑えない真剣さが伝わるが、よほど根っからスリルが好きなアスリートたちなのだろう。

スノーボードの山脈直滑降も007にも勝るひどい落下状況なのだが、これはとても「滑る」とは言えず、雪の岩山の岩に激突せずにパチンコ玉のように直滑降しなければならない按配だ。さらにひどいのが、ベネズエラの大滝エンジェル・フォール980mの絶壁をロック・クライミングで下から上によじ登るという荒業。犯人をFBI捜査官が追い駆けるという場面なのだが、物語は無視。よくやるよな、の一言以外何も言えなくなる。人間にも限界のパワーというものがあろうに。スリルとか度胸とか、そんな世界ではなくて、異常なまでに美しい世界最大の落差を放つ滝と絶壁の光景だ。そこに手足を伸ばして蠢いている虫2匹のようになってしまった人間の姿が悲しい。どうしてそこまでやるの? 人間という生き物はおかしい生態や習性を持っていることが、つくづくこの映画でうなずけた。そう言えば、あの鉱山といっていいのかわからないが、鉱脈採掘の山岳での爆破シーンは本当に岩山を爆破させたのだろうか。古い高層ビルを爆破させるようなやり方で、鉱山の山脈を爆破させて、モトクロスのバイクで逃げ切るシーンがあったが、岩山の岩じゅうが転げ落ちて来る壮大なシーンなのだが、ありゃ本物の撮影でっしゃろかいな。CGとVFXとSFXとFXとビジュアル・エフェクト村の混声合唱団のようなものではありゃしまへんか。日本では2014年に御嶽山の突然の噴火で多くの犠牲者が出てしまったが、ふと私はあれを思い出した。映画とはもっと比較にならない傷ましい自然災害による災難となってしまったが、あの時の噴火状況を携帯で撮影していた登山者たちがいたが、あの時のウソのような突然の悲劇的な場面が何度もTVに映し出されていたが、歴史に残る悲劇はいつか映画にもなるのかもしれない。日本は火山列島でもあり、地震列島でもある。映画『X-ミッション』はあくまで娯楽映画であるが、スタントをするアスリートたちは精密なワザと長年の鍛錬によって命懸けの仕事をしていて、実に敬意を表したい。日本では生まれて来ない映画の1本といえるだろう。地球規模で大自然を4K撮影した映像の美しさといい、7.1chのDTS-HDマスターオーディオによるサウンド臨場感といい、見事な大作に圧倒された。わが家もいつか4K機器揃いのホームシアターにしたいものである。

(2016/09/05)



映画『ザ・ブリザード』 (2016米 118分)
   (原題:The Finest Hours)ブルーレイを鑑賞

ディズニー映画であることに注目をした。映画会社のイメージは決して裏切らない製作をして来るので、ここぞとばかりに楽しみにして鑑賞してみた。映画終了のエンディングで、やっぱりドルビー・アトモスだったことに納得。最初に日本語吹替で鑑賞していったのだが、音響効果と吹替の声優たちの違和感や翻訳の受け止め方が少し気になったので、再度、字幕でも鑑賞していったわけだが、通常なら英語での字幕しか鑑賞しないのだけれども、同じディズニー映画『アナと雪の女王』で日本語吹替と英語・字幕ではこんなにも違うのかと体験してしまったので、ここは大事な楽しみ方だと思って、2回ほど『ザ・ブリザード』は鑑賞したわけである。BDの英語・字幕はDTS-HDマスターオーディオ7.1chで、日本語吹替ではDTS-HDマスターオーディオ5.1chでの収録にされている。その違いは顕著に現われていた。ホームシアター専用のAVアンプなら両方どちらでも鑑賞・堪能できると思うのだが、私の映画鑑賞はなにせ26年前のアナログ・オーディオアンプで鑑賞しようというのだから、現代人には堅物もしくは骨董品にしか思えないかもしれない。

日本がかつてバブル全盛期だった頃、1990年、時代の申し子であったかのように、日本のオーディオ・メーカーは競って華やかな最高級品を目指してメイド・イン・ジャパンを造り続けていた。アンプの中の細かな部品一つ一つに対しても執着を持ってこだわり続け、いいものを際限なく製造し続けていた。米国に学び英国に学び、独自の技術を開発するために、日本は日本で出来ることの頂点を目指して可能な限りの知恵と技術を磨き続けて、究極のオーディオ・システムを築いていった。今から思えば、カセットテープなど超骨董品かレアな転売品にしか見えないかもしれないが、この超アナログ音域は今のハイレゾ音源にも勝る世界ではあるのだ。ただし、テープがこすれてゆく欠点さえなければの話。そんな音など実際には存在しないのだが、音とは何か、という定義にこだわれば、それは紛れもなく「温かいぬくもり」「歌手の息遣い」そのままなのである。ゼロから300kHzの周波数特性を感受する機器でもあるのだ。生命体は温かく活きており、冷たい金属には感情は無い。オーディオがいかに生命体のぬくもりを求め続けていたか、バブル崩壊は最先端技術の放棄にもつながっていったのである。

やがて、古いものはシャッフルされ、解体されて、基板の金だけが取り出されるや、金の延べ棒に転身するが、お役ご免となった部品は捨て去られる運命をたどる。廃棄もしくは忘却の彼方へと葬られるのである。さて、そんな忘却の海が見えてきたわが愛しのオーディオ・ルーム兼ホームシアターで鑑賞した今回の力作『ザ・ブリザード』であるが、特殊な地形での砂州沖での巨大タンカー難破という実話に基づく事故を再現した映画となっており、しかも巨大タンカー「ペンドルトン号」の船体は前後真っ二つになり、スクリューのある後ろ側に生き残った船員たちの物語だ。と言うよりも、荒れ狂う嵐のなか彼らを救助するために遭難現場へ命懸けで向かったアメリカ沿岸警備隊の葛藤と勇気の物語でもある。むしろ後者側に主軸が置かれた目線ではあるけれども、荒れ狂う大波の描写や真っ二つに破壊されたタンカー船内のいろんな金属音などが混ざった難破模様は、すこぶるリアルで過激だった。ハリケーンに遭遇したような海上の高波はまるでビルの高さまでに膨らみ息を呑むほどだ。その大迫力の臨場感をブルーレイでは見事なまでに映像音響ともに再現していた。アトモス劇場のような映画館で観てれば、きっとアトラクション状態だっただろう。

現実の恐怖を映画で表現することはなかなか難しいとは思うが、映画もついにここまで表現するようになったのは素晴らしいことだと思う。この映画はTV画面で観ているだけでは、その迫力は全く伝わらないだろう。映画はどこまでも進化する。進化してゆく高次元の領域で映画鑑賞し、可能な限り再現された映像音響のなかでマスター音源を体感することは、最上の悦びを感じる。と同時に、生きてゆける幸運や、偶然の運命とはいえ生きていられる僥倖のような命拾いもまた、生かされている命運も幸せの原点といえるだろう。肉薄したスケールでこんな映画を堪能できたことは、さすがディズニー映画の証しなのだろう。そして、再現してくれたわが家のオーディオ・ホームシアターの現役バリバリにも感動した。新しい機器システムでなくても、低域感抜群の音の粒子を立体的に発してくれるアナログ・サウンドもまんざら捨てたものではないことを確認した。1952年のセピア色感やほのかな裸電球色の温かみなど、細かな再現描写は物語以上にあざやかだった。小さな救助艇が大波に向かうシーンは勇気の象徴であるが、人生を描いているともいえる。そして、定員12名の小型救助艇が遭難タンカーから32人もの乗組員を実際に救出したことは、アメリカ海難史上絶賛に値する史実として末永く語り継がれることだろう。


(2016/07/15)


『エクス・マキナ』
ついに解禁! えっ、これって禁断の映画? 2015年製作イギリス映画『エクス・マキナ』
人工知能ロボットのちょっと恐いSFスリラー映画。日本でも今年6月11日についに公開!
待望のユニバーサル映画が日本にも上陸。そんでもってストーリーはともかく、
これがこれが世界初のDTS:X音響仕様で、いずれ日本語字幕入りBD発売予定のはず・・・。
しかも映像は4K撮影で行われたとか。本年度第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞!
この受賞の影響はやっぱ大きいでんなあ。

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
   (原題:MADMAX FURY ROAD)を絶賛する!

    究極の音響ビジュア
    映像は壮大なる大陸ロケ
    ハチャメチャ車列軍団特別装備のエンジン全開
    破滅か希望か

2016年米2月28日第88回アカデミー賞授賞式で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(原題:MADMAX FURY ROAD)が、音響編集賞、録音賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイク・ヘアスタイリング賞、編集賞、の最多6部門を受賞した。これぞ映画らしい映画といえる。映像を楽しみ、サウンドを堪能しながら、壮大なる娯楽映画の醍醐味を味わう。この映画は、われわれ観客をいったいどこへ引率誘導しようというのか。果てしないリアルな劇場空間の迷路へ誘い込み、息を呑むようなスリルと叛逆のセオリーへと導いてゆく傑作、そして破壊への芸術的オマージュは、見事なまでにカメラワークのなかで観客をも巻き込み、ドラスティックなサウンドの持続と砂漠を激走してゆく車両軍団追跡のシナリオは、もはや俳優が俳優であったことをすっかり忘れさせてしまう緊迫の連続と共に、映画であったことさえ陶酔させてしまう荒々しい大作だった。スタント無しでは俳優が死んでしまいそうな空中体当たりシーンの闘いは肝を潰す描写の連続で、核戦争後の破壊された大地を彷彿とさせるには充分すぎる荒野となっていた。

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、3Dとホームシアター、または私のようなブルーレコーダーをオーディオ・アンプにつないで迫力を再現するのがベストだ。画面もできるだけ大きいほうがいい。2Dと3Dと両方を観たかぎり、圧倒的に3Dのほうがリアルすぎて面白い。昨今の3D比較としては、優れたドルビーアトモスの採用で低域・高域・臨場感・立体音像は抜群で、アカデミー賞の音響編集賞、録音賞を受賞というのは、当然な気がした。ジョージ・ミラー監督の「マッドマックス」シリーズ集大成のこだわりが長い年月をかけて熟している気がする。本物の大陸(アフリカの国ナミビアの大西洋岸2千kmも細長く続くナミブ砂漠でのロケ)での過酷な撮影続きは、俳優陣やスタッフらをさぞや苦しめたに違いない。あの壮絶な砂嵐の中へも走行してゆくシーンだけはCGかもしれないが、よくあんな劣悪な過酷環境のなかを撮影していったものだ。CGやVFXを極力避けたいとするジョージ・ミラー監督の意気込みも半端ではない。主演のトム・ハーディやシャーリーズ・セロンらが監督とも散々もめたのかどうかは定かではないが、命がけの厳しい強行ロケであったことだけは全員一致するところだろう。この映画については、あらためて「シネマ日記2016」でも後日書くことにもなろうか。ついでに『トランスフォーマー ロスト・エイジ』3Dや『ポーラー・エクスプレス』3Dも今回合わせて視聴してみた。どちらもすばらしい仕上がりなのだが、今ここではあえて触れずに割愛しておこう。

昨今の3D比較として、実は他にも驚いた作品がある。それが『ジュラシック・パーク3D』(2015)だ。これは2015年に公開された最新作『ジュラシック・ワールド』を記念して製作された第1作目の最新3D技術で甦ったものだ。1993年のスティーブン・スピルバーグ監督の、かのVFX金字塔ともいうべき恐竜アドベンチャーの名作だが、当時はそのリアルな再現に誰もが驚愕したものである。さすがスピルバーグで、今回あらためてBDで3Dを鑑賞してみたが、その迫力は2Dとは全く違って迫力満点だった。恐竜の生々しい精緻な映像と忍び寄るT-レックスの足音といい、ずば抜けた音響効果のサウンドにもびっくりした。こんな体感をしながら第1作目の『ジュラシック・パーク』が22年後に再び甦って来るとは、想像以上の最新技術にも驚いた。画質・音質が22年ものあいだにすっかり向上して様変わりしていたことに深く感動もした。BD2枚組の『ジュラシック・パーク3D』(2015)の英語・字幕音声では7.1chサラウンド/DTS-HDハイレゾリューションオーディオとなっており、2Dの英語では7.1chサラウンド/DTS-HDマスターオーディオとなっている。これほどまでに画質・音質が改善されてしまうと、今日まで生きててよかったと思うのである。現代社会の人食い恐竜に食われなくてよかった(笑)。そして、このBD2枚組ディスクに収録されている特典映像がまたすばらしい。今回の3D映像化に触れて、900人ものCGエンジニア達が努力してくれたおかげで上手く出来上がったと、賛美と感謝を述べているスピルバーグ監督のインタビューが見られるのもいい。2Dの特典の方では他にもあらゆる「ジュラシック・パーク」の軌跡やメイキングなど多岐にわたって満載となっている。

最新作『ジュラシック・ワールド』3DのBDも今回合わせて鑑賞してみたが、こちらはもっと過激でより洗練された物語となっており、いかにも現代版の「ジュラシック」シリーズと言えそうだ。『ジュラシック・パーク3D』の画質は『ジュラシック・ワールド』3Dの画質に引けをとらないし、ただ最新版『ジュラシック・ワールド』でのBDの英語音質が3D、2Dとも7.1chサラウンド/DTS-HDマスターオーディオ仕様なのはどうなのだろう。空から襲って来るプテラノドンがいきなり背後から人を浚ったりするので、てっきり9.1chにも勝るDTS:X仕様かなと期待して思いきや、予告通りまだまだだった。ドルビーアトモスが最近増えているので、高域繊細感と超重低音が漲るDTS高レベル超体感のソフト出現は待ち遠しいところだ。イギリスのSFスリラー映画『エクス・マキナ』(2015)は4K撮影でDTS:X仕様のようだが、今回の第88回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞したことから、日本では未公開映画とはいえBDソフト化を是非とも望みたい。面白そうなので広告すれば知名度も上がるかもしれない。最後に『ジュラシック・ワールド』物語の終盤で、格闘し合う二匹のT-レックスのうち、悪者側のT-レックスを巨大水槽から突然現われたモササウルスがパクリと噛み付くシーンは、3Dとして音響的にも肉薄し臨場感あふれるクライマックスだった。恐竜映画の迫力は最新技術のVFXでますます主役になって来たが、現代のような混迷する時代には必要不可欠な存在ではなかろうか。「ジュラシック」シリーズは永遠に続いて欲しいものだ。


(2016/03/04)



映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が第88回アカデミー賞の作品賞を含む10部門にノミネートされた。今月日本時間2月29日の発表が楽しみではあるが、映像と音響にここまでこだわって仕上げられた奇想天外な映画も珍しい。映画製作に至る舞台裏がBDにも紹介されているが、過去の『マッドマックス』シリーズから別次元に刷新してこんな娯楽映画が生まれたことが何より嬉しい。丸坊主にしたシャーリーズ・セロンが、かつて『モンスター』(2003)で肉体改造(体重増)した意気込みを思い出す。

それにしても昨年2015年度の同オスカー受賞作品『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)の品性に欠けた役者魂には、ほとほと愛想が尽きたが、映画には最低限の格調もほしいものだ。いくら優れたカメラワークだのドラムソロの音響が秀でていようが、今はCGやVFXには慣れた時代なので、品格を貶めるような小細工の物語はやめたほうがいい。観てて、がっかりするだけである。マイケル・キートンが老醜のバットマンならぬバードマンを熱演するくらいなら、ロバート・デニーロが『マイ・インターン』(2015)のようにも好演できる燻し銀の渋みで以ってシニアを演じてもらいたいものだ。

(2016/02/12)



ドルビーアトモス対DTS-HDマスターオーディオ7.1chの対比は面白い。デジタル指向やハイレゾ指向は、高齢者でもない中高年に属する私のようなショップオーナーの聴覚には、今ひとつ馴染めない超高域音源の集合体におもえる。超低域音源が好きなオーディオマニア派の私としては、映画『MADMAX FURY ROAD』(2015)に出て来るドーフ・ワゴンの過激な太鼓装備、火炎放射器付エレキギターで爆音を轟かせてゆくシーンにも大変共鳴してしまう。超アナログの奇想天外な車両群によるアクション映画だが、音源は超ハイテクのドルビーアトモス仕様で漲っているから甚だ面白い。

(2015/11/04)
立方体音域って、初めからアトモス?
スーパーウーファー付コンデンサ型スピーカーは劇場向きなのか

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SEQUELⅡ 立方体音域の原理をさぐる

およそ38年前に買い揃えたオーディオシステムの愛機は、壊れるべきして壊れていった安価なオーディオ機器類だった。生き残ったのはダイヤトーンのスピーカーDS-35B MKⅡ(6Ω 35Hz~20KHz)くらいなものだった。青春時代の形見といったところか。それから10年余りが過ぎて、同じ音楽を聴くにしても、いい音で聴きたいと思い、新境地からシステムにもいろいろこだわりが出て、マーティン・ローガンのスピーカーとの出会いから買うことになり、耳を傾けるようになった。使用ケーブルも安価なものから徐々にグレードアップしていった。スピーカーケーブルを変えると、驚くほど音域が広がり、実に楽しくなって来た。電源ケーブルにもこだわるようになって、分相応のテーブルタップも加工していった。その手作りの電源コードは今でも使用している。ハイエンドスピーカーを聴くことで、アンプもCDプレーヤーもブルーレイレコーダーにもこだわりが伴っていった。

現在、ハイレゾ音源にも注目はしているが、肝心の好きなアーティストたちのハイレゾ音源が見当たらないために、USB DAC等の買い揃えには至っていないのが現状。192kHz/24bitや384kHz/32bitの世界なら別段BDのライブを観ながらサウンドにも酔い痴れるので、まだそっちで堪能すればいいか、という気持ちになってしまうのだ。クオリティーのある音楽なら誰の歌でも演奏でもいいや、というわけにはゆかない。好きなアーティストたちのハイレゾ音源をダウンロードしてマーティン・ローガンで堪能するには、当分年月がかかりそうではある。また、スピーカー群もAVアンプも一から買い揃えるには、ホームシアター専用の部屋も必要となり、こちらも齢を取りすぎて、もう生きてはいないかもしれない。ならば、今のシステムで最大限の老春を今こそ謳歌すべきと考えてしまうわけだ。ま、それほど齢を食ってるわけでもないが、さてさて、話を映画に戻して、BDで鑑賞するドルビーアトモスに触れてみるのは結構楽しい。DVDの世界にはもはや戻れない気もする。よほど物語がよくてBDが無い場合はDVDで仕方がないが、BDでドルビーアトモス収録された作品には注目したい。また、縦横無尽の空間を11.1chで高度に征す新たなDTS:Xなるサラウンド方式を搭載したBDの入手にも今後は注視したいところだ。

あらためて考えてみると、そもそも立体音像はSEQUELⅡの特徴でもあった。演奏会場のホールでステージ上のオーケストラを前方にして、観客席から音楽を聴くわけだから、本来2チャンネルのステレオであれば充分なのだ。ただ、ステージ上の奏者配置には立体的な要素もあることから、中央にピアノ、右側にヴァイオリン奏者たち、左側にはチェロ奏者たち、右奥から左奥にかけて管弦楽奏者たち、といった配置から奏でられるそれぞれの音の響きを、オーディオシステムで捉えられるのは、スピーカーの音が後方にも出るSEQUELⅡならではの特異性であろう。左右2chスピーカーパネルの前後数メートルとスピーカー本体の高低180cmからつくられる立方体音域の中に身を置けば、最初から立体音像が構成された要素なわけである。そこに禁じ手とも思える映像をオーディオアンプに接続して、一気にホームシアターに仕上げてしまおうというのだから、オーディオ人生を長く生きて来た甲斐があったというものだ。ブルーレイのドルビーアトモスやDTS-HDマスターオーディオ7.1chの収録ディスクが加わることで、わが家はすっかり劇場に一変してしまったのだ。何も超高級機器を新規から買い揃えて部屋を作り直さなくても、既存のオーディオシステムを活かせば、堂々たるわが家のドルビー劇場と言ってもいいような気がする。十畳ほどのささやかな劇場空間が確保されてるだけで、日々楽しいのは幸せなことである。

ここで、ついでにドルビーのWebサイトから下記項目を紹介しておきたい。


音響制作における新たな可能性と効率化


ドルビーアトモスは、映画のサウンドトラック制作に使用されてきた従来のチャンネルベースのワークフローに、動きを持つオブジェクトを組み合わせることで、より高い柔軟性をもたらします。オブジェクトを用いることで、コンテンツクリエーターは、ダビングシアターのスピーカー構成に関係なく、スピーカー構成に関係なく個々のサウンド要素をコントロールすることができるようになります。オブジェクトは静止させることも、移動させることもでき、メタデータによってコントロールされます。


映画音響への簡素化されたアプローチ


ドルビーアトモスは音響制作工程をより効率的にします。サウンドミキサーは映画監督の意図を効果的に捉え、5.1チャンネルと7.1チャンネルのファイナルミックスをリアルタイムでモニターし、自動的に作成することができます。

配給も簡素化されます。ドルビーアトモスでは、制作者の意図をすべてDCP内のファイルに収納できるため、様々なスピーカー構成を持つ映画館で忠実な再生が可能です。


技術的な特長

既存の音響制作のワークフローに簡単に組込可能
最大128トラックのロスレス音声ストリームを同時に処理
最大64chのスピーカー出力
オーバーヘッドスピーカーにより制作者の表現自由度を拡大
スクリーン側にサイドサラウンドスピーカーを増設することで音の移動がさらにリアルに
様々なスピーカー構成、映画館の形状、大きさに対応
たった1つのDCPで配給を簡素化

by DoLBY




(2015/11/04)
文・ 古川卓也


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制作・著作 フルカワエレクトロン

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