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マドンナ MADONNA WORLD
文・ 古川卓也 |
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MDNA WORLD TOUR
この世には取り戻せるものと、一度失うと二度と取り戻せないものがある。失われた住まいや土地はまたどこかで取り戻せるが、失った家族や命は二度と戻らない。この度の広島大規模土砂災害は心が痛むばかりだ。大規模土砂災害が起きてからもうすぐ3週間目になるが、行方不明者の捜索は今も続いている。犠牲者は72人となり、行方不明者は2人となっている。あまりに痛ましくて言葉にならない。大規模な土砂瓦礫や岩石や泥まみれの樹々の残がい撤去も早くどうにかならないものかと焦る気持ちがある一方で、大雨で崩れやすいことが判った真砂土の地形山麓に建てた家に帰宅する恐怖があるのもとても気の毒である。避難所から迂闊に家に戻れなくなってしまった多くの人たちの心中たるや、絶望ばかりが募って日々穏やかではあるまい。連日3000人(9月5日付で2200人余りの態勢)規模の警察・消防・自衛隊の捜索活動が懸命に悪天候を見極めながら昼夜を問わず行方不明者の捜索は続けられているが、なかなか遅々と進まない。本当にいたましいばかりである。土日には全国から1000人以上ものボランティアの人達が瓦礫撤去などの手伝いに来られるのも、この日本列島全体がいかに自然災害国で、お互いに被災の気持ちがわかり合い助け合っているかを物語っていると言えるだろう。 そういった逆境には、うってつけの音楽もある。マドンナの音楽には普遍の愛がある。愛も希望につながるものだ。愛は求めるものではなく、ひそかに捧げるものだ。愛にもいろいろな形がある。マドンナの『MDNA WORLD
TOUR』(2013)に「MASTERPIECE」という曲があるが、これはマドンナが脚本・製作・監督した映画『ウォリスとエドオード/英国王冠をかけ恋』(2011)のエンディングでマドンナ自身も歌う主題歌だ。何度聴いても強く胸にひびくバラードである。そのメロディは悲しみを流してくれる癒しの曲となっており、マドンナが謳ってこその力強さと哀切さが現れている音楽だ。あんなに激しくもあり明るくもあり、観衆を圧倒させてくれるパワーは、天性のものと豊かな体験から湧き出てくるものなのだろう。数多い恋愛の遍歴や、三度の結婚・離婚を重ねて来たマドンナならではの信条から由来するものかもしれない。また、根っからのダンサーであり、シンガーソングライターであり、音楽家であって、女優であり、絵本作家でもあるが、実に多彩で人生に貪欲な嗜好の持ち主の為せるワザかもしれない。いくら歳を重ねてもユーモアに溢れ可愛くもあり、歌い方に品位がある歌手だ。時にやり過ぎて軽率な露出も厭わないが、それも計算のうちと言うより、本能のなすままともみてとれる。実に大衆的であり、下劣から高貴まで耽溺し領有するマドンナ・ワールドといっていい。ロックの殿堂入りも果たし、クイーン・オブ・ポップにふさわしく実に知的で愛嬌もあるからステキだ。
CD: Music from the Motion Picture~ Abel Korzeniowski こんなにも美しい音楽に包まれた映画は珍しいといえる。過激な描写を打ち消すかのような、相反するメロディが心を揺さぶる。映画『W.E.』の、時を超えて、ウォリス・シンプソンに自分の境遇を重ねるウォリー、タイムスリップした二人の女性の二重写しの結婚生活が交錯するなか、女性迫害やDVに苦悩する女性側から見た視線がいたましい。傷ついた魂をやさしく包み込んでゆく音楽の旋律がすばらしい。 |
(2014/09/08 - 2014/11/06) |
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