『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』 (原題:Fast X)(2023年 米)
『ワイルド・スピード』シリーズは今回を含めて全10作とも観て来た。何といっても初公開『ワイルド・スピード』(2001年)の翌年の『トリプルX』(2002年)におけるヴィン・ディーゼルの主演映画が強烈すぎて、彼の出演する映画は全部に興味が湧いて来たのだった。日本にはいないアクション俳優ヴィン・ディーゼルの魅力は今さら言うに及ばない。まして今回10作目となる『…/ファイヤーブースト』で敵役となるジェイソン・モモアは『アクアマン』(2018年)の印象が強すぎて、不敵な笑いが意外と似合わないのになぜか適役に相応しいのはウケる。ガタイの大きさといいスタントマン不要の疾走バイク運転歴はBD特典にも述べられているが、車の運転より得意中の得意だそうで、ローマ市街での無謀なバイクアクションは生涯二度と出来ない記念ロケとなったようで、ジェイソン・モモアの役どころはヴィン・ディーゼルを相手に全く申し分ない魅力満載が溢れていた。悪役にするには勿体ない気がするが、これも彼の器の大きさでもあるわけで、多種多様な演技ができる証しであろう。まだ44歳というからこれからの作品も楽しみとなる。
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さて、『ワイルド・スピード』のドミニク(ヴィン・ディーゼル)のファミリーや彼を取り巻く登場人物たちがまた凄い。ドミニクの妻レティ役のミシェル・ロドリゲスが『アトミック・ブロント』(2017)のシャーリーズ・セロンと素手で格闘するシーンがあるが、この二人のアクションは印象深い。危険なハッカー役サイファー(シャーリーズ・セロン)のヘアースタイルがまた魅力的。私が大好きなシャーリーズ・セロンについてはこれまでシネマ日記にもたくさん書いて来たが、もともとファッションモデルからのアクション俳優業なので、彼女のファッションセンスはいつも注目している。抜群の演技力とアクションには惚れ惚れとする。おまけに超美人なので脱帽だ。一方のミシェル・ロドリゲスといえば、『ワイルド・スピード』シリーズのみならず『バイオハザード』(2002/2012)や『アバター』(2009)でのイメージが強い。2015年3月20日発売の月刊誌「DVD&ブルーレイVISION」(Vol.174
日之出出版)は、最も美しいミシェル・ロドリゲスを表紙に飾っていたので当時の私は記念に買っておいた。
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今回の『ワイルド・スピード』シリーズ第10作目「ファイヤーブースト」の魅力は、想定外のオープニングから怒涛の疾走アクションを兼ねる遠隔操作されたトラックに積載されている中性子爆弾の時限爆破阻止の行方や、悪役ダンテ(ジェイソン・モモア)のどこまでも執拗な異常性を超える織り込み済み工作アクションの連続だろうか。ドミニクを殺す「死だけではあまりに慈悲深く、それだけでは物足りぬ恐怖を与える」という復讐劇なのだが、1億ドルが入った金庫を奪う12年前の出来事オープニングからしてストーリー全編を釘付けにしてしまう展開は、それぞれの大物役者揃いが一流アクションスターだからでもある。それにしても球形の火だるまとなって街中の坂道を転げてゆく巨大な鉄球姿の中性子爆弾を追い駆けるシーンはやはり凄い。街中で爆破すればローマは一瞬にして焦土と化し、小型化とはいえ核爆発の威力は熱エネルギーの放射線を放出し、人間を含め生物のすべてを殺傷する。それを必死に阻止しようとするドミニクと仲間たちの攻防には目が離せない。バチカン市国の教皇庁を目標にした火だるま鉄球は、ドミニクが機転を利かせ工事用クレーンで方向転換させてテベレ川に向け、ついにはそこで水中爆発することになる。水の中の爆発音はさすがドルビーアトモス仕様だけあってホームシアターとしては堪能できるものだった。半端ない痛快アクションの次元の領域を遥かに超えた映画だった。ただ、この第10作目の終盤クライマックスでは前編のようで、後編がありそうな終わり方なのがニクい。第11作目が後編なのだろうか。ダンテの悪事は続くし、ドウェイン・ジョンソンが少しだけ顔出しして来るし、ジェイソン・ステイサムは中途半端だし、ガル・ガドットも南極の潜水艦からひょっこり顔出しだけだし、本来の主役陣が多すぎるのも欲張りすぎでは。だんだん『アベンジャーズ』になって来たような。でも、映画はいつも最高
!!
(2023/12/18)
文・ 古川卓也
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